今回は、ミヒャエル・エンデ 著、大島かおり 訳の「モモ」(岩波少年文庫)を読んだ感想を書いて行きます。本書は小学校高学年向け(裏表紙に5~6年生向けと書いてありました)の児童書となっていますが、侮ることなかれ。確かにストーリーを楽しんだり、理解することは子供にもできるとは思います。しかしながら、大人の立場になって読むと、本書のテーマは、とても重く、深いものに感じます。本書のテーマはズバリ、”時間とは何か?”です。この本が書かれたのは、1973年のドイツです。この頃はドイツだけでなく、世界中の経済成長が急激に進み、人々の考え方がシフトしていった時代だと思います。とりわけ時間は、=お金として認識され、これまでよりも時間にせかされたり、けちけちしたりといった風潮があったのだと思います。このような時代背景をちょっと皮肉った、だけど、改めて時間との付き合い方を考えさせる作品です。
主人公のモモは、劇場跡(ほぼ廃墟)に住み着いた浮浪少女です。作中では家族の有無など、モモの過去には言及していません。モモはまともな教育も受けていないため、言葉や文字をあまり知りません。ただ、これが幸い、モモの最大の特技は、”人の話をよく聞く”だったのです。このおかげで、モモの周りにはたくさんの人が訪れるようになりました。大人から子供までたくさんの友達ができました。(本題から外れますが、人の話をよく聞ける人には人が集まるよね、という教訓が含まれています。人は自分の話を聞いてもらいたい生き物なのです。)
そんな中、”灰色の男たち”というのが現れます。彼らは、時間貯蓄銀行の外交員と名乗り、人の心の隙をついて、時間を節約するよう促します。男たちに流されるまま人々は時間の節約に奮闘します。子供と遊ぶ時間、恋人やパートナーと会う時間、本当は大事な時間をどんどん削っていきますが、一向に時間にゆとりは生まれません。それどころか、節約した時間は男たちに奪われていってしまうので、どんどん時間が無くなります。といった話になります。
(灰色の男たちは、私見では、世の中の経済成長しなければ、といった意志・流れ・空気のようなものを表現したものだと読み取りました。)
あまり書きすぎるとネタバレになってしまうので、ストーリーはここまでにしますが、最終的にはモモが様々な協力者と奮闘して、男たちを退治し、人々は心を取り戻すといった流れになります。
半世紀(50年)前に書かれた作品ですが、現代に通ずるものがありますよね?人々は経済発展により、より安全・安心・便利でゆとりのある生活が送れるように、この50年間取り組んで来たのだと思います。確かに、よくなった部分はあります。身体の病気では死ににくくなったし、自宅に居ながら何でも買い物できるようになりました。一方、精神的な病は増え、お店でウインドウショッピングするといったプロセスを楽しむ機会は減りました。結局はトレードオフな関係で、何かを得れば、何かを失うのだと思います。
少し脱線しましたが、時間は物理的な長さではなく、心がこもっていない時間は死に、心がこもった時間は生きるのだということを本書は教えてくれました。どんどん時間を削っていっても、そこに心が無ければ、節約した時間も死んでいってしまいます。時間は貯められないということです。
本ブログはパパタメBlogなので、子育てに言及すると、作中で親に相手にされなくなった子供たちがモモのところにやってくるお話があります。子供たちは、高価なおもちゃを持っていますが、モモにはそれが面白いものに思えません。おもちゃはたいてい、一つや二つの遊び方しかできないからです。モモはそんなもの持っていないので、何も無いところから自分で遊びを作り出すのが得意です。次第に子供たちもモモの遊びの方が楽しいことに気づいていきます。
心にグサッとくるパパ達いませんか?自分の時間が欲しいために、子供にスマホや適当なおもちゃを与えて放っていることがありませんか?私も例外ではありません。休日の日中は子供のために時間を使わなきゃいけないので、夜はできるだけ早く寝てくれ、と考えていた時期がありました。今では後悔しています。紙やテープで作るよくわからない作品、公園の石や枝を使った想像力豊かな遊び、子供と真剣に向き合うと、失っていた自分の創造性が取り戻せますし、なによりもそれが楽しいものだと気付けるようになりました。結局、こういった大事なものを削って得た時間はむなしいですし、心は満たされないことを経験してきました。
これだけ経済発展した世界においても、未だに生活にゆとりができていないと思います。もう少し細かく言うと、周りに流されている限り、心(=時間)にゆとりはできないのだと思います。今一度、本当に大事にすべきものは何か、じっくり考えてみて下さい。
本書は現代に生きる私たちにどう生きるべきか、改めて考えさせてくれる作品です。是非、心にゆとりをもって読んでみて下さい。
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